暑い時期になると、患者さんから次のような質問を受けることがあります。
「高血圧で減塩をしていますが、熱中症予防のためには塩分を多くとった方がよいのでしょうか」
「塩飴やスポーツドリンクは毎日とった方がよいですか」
熱中症予防では水分と塩分の補給が大切といわれます。一方、高血圧の治療では減塩が重要です。
一見すると矛盾しているように思えますが、日常生活と大量に汗をかく場面を分けて考えると分かりやすくなります。
結論:普段は食塩6g未満を続けます
高血圧の方は、暑い時期でも1日の食塩摂取量6g未満を目標にすることが基本です。
3食をきちんと食べている方は、通常の食事から必要な塩分をとっています。室内で過ごす日や、短時間の外出などで大量の汗をかいていない場合、熱中症予防のために塩飴や梅干しなどを追加する必要はありません。
熱中症予防でまず大切なのは、塩分を増やすことではなく、暑さを避け、のどが渇く前からこまめに水分をとることです。
状況別の塩分・水分補給
| 状況 | 水分補給 | 塩分補給の考え方 |
|---|---|---|
| 室内で通常の生活をしている | 水や麦茶をこまめに飲む | 3食とれていれば追加の塩分は原則不要 |
| 短時間の外出や軽い活動 | 活動前後にも水分をとる | 大量の汗をかかなければ塩飴などは原則不要 |
| 炎天下での長時間作業・運動 | 休憩をとり、水分を少量ずつ繰り返し補給 | 大量発汗時は水分とともに失った塩分を一時的に補う |
| 発熱、下痢、嘔吐、食欲不振がある | 脱水になりやすいため早めに医療機関へ相談 | 自己判断で塩分や薬を調整せず、医師へ相談 |
| 心不全・腎臓病などで水分制限がある | 一般的な水分量をそのまま当てはめない | 主治医が指示した範囲を守る |
普段の水分量はどれくらいですか?
日本高血圧学会は、暑い時期の水分について、1日1.2リットル以上をひとつの目安として示しています。
一度に大量に飲むのではなく、起床時、食事時、外出前後、入浴前後、就寝前などに分けて、少しずつ飲みましょう。
ただし、心不全や腎臓病などで水分制限を受けている方は、この量をそのまま当てはめることはできません。必ず主治医の指示に従ってください。
大量に汗をかいたときはどうしますか?
炎天下での長時間作業や運動などで大量の汗をかいた場合は、水だけでなく、失われた塩分も一時的に補う必要があります。
厚生労働省の職場における熱中症予防では、高温環境で身体作業を行う場合の目安として、次の飲料が示されています。
- 0.1〜0.2%の食塩水
- ナトリウム40〜80mg/100mL程度を含む飲料
- 経口補水液など
0.1〜0.2%の食塩水は、1リットルの水に食塩1〜2gを含む濃度です。
ただし、これは高温環境で大量に汗をかく作業時の目安であり、普段から追加で食塩を1〜2gとるという意味ではありません。
高血圧、心臓病、腎臓病がある方や、利尿薬を使用している方は、必要な量が個人によって異なります。大量に汗をかく予定がある場合は、あらかじめ主治医へご相談ください。
塩飴・スポーツドリンク・経口補水液は毎日必要ですか?
塩飴
3食を食べ、通常の生活をしている高血圧の方が、熱中症予防のために毎日塩飴をとる必要はありません。
汗をほとんどかいていないのに習慣的にとると、食塩摂取量が増え、血圧に影響する可能性があります。
スポーツドリンク
スポーツドリンクには水分と電解質が含まれますが、商品によってナトリウム量や糖分が異なります。
日常の水分補給では、水や麦茶を基本にし、大量に汗をかく場面で成分表示を確認して使用しましょう。糖尿病や血糖値が高い方は、糖分にも注意が必要です。
経口補水液
経口補水液は、水分と電解質を速やかに補うための飲料です。
脱水が疑われる場合などに役立ちますが、普段の飲み物として大量に飲み続けるものではありません。高血圧、心臓病、腎臓病がある方は、使用について医師や薬剤師へご相談ください。
降圧薬を飲んでいる方が注意すること
暑い時期は、発汗や食欲低下によって脱水になり、血圧が普段より下がることがあります。
特に、尿を出しやすくする利尿薬を飲んでいる方は、水分や電解質のバランスが変化しやすいため注意が必要です。
ただし、自己判断で降圧薬や利尿薬を中止・減量しないでください。
次のような状態がある場合は、早めに主治医へご相談ください。
- 立ちくらみやふらつきが続く
- 血圧が普段より大きく低下している
- 食事や水分がとれない
- 発熱、下痢、嘔吐がある
- 尿の量が明らかに少ない
- 急に体重が減った
- 強い倦怠感がある
熱中症が疑われる症状
以下の症状がある場合は、涼しい場所へ移動し、衣服をゆるめて体を冷やします。自分で飲める状態であれば、水分と塩分を補給してください。
- めまい、立ちくらみ
- 筋肉痛、こむら返り
- 頭痛
- 吐き気、嘔吐
- 強い倦怠感
- 集中力の低下
呼びかけへの反応がおかしい、意識がない、自力で水分を飲めない場合は、無理に飲ませず、すぐに救急車を呼んでください。
高血圧の方にお伝えしたいポイント
- 夏でも食塩6g/日未満の減塩を続ける
- 3食とれている日常生活では、追加の塩分は原則不要
- 水や麦茶を、のどが渇く前からこまめに飲む
- 大量に汗をかいた場合だけ、水分とともに失った塩分を一時的に補う
- 利尿薬を使用している方や、水分制限がある方は主治医へ相談する
- 体調不良時に薬を自己判断で変更しない
豊川医院では、高血圧の治療中の方について、血圧、服用中のお薬、心臓や腎臓の状態、生活環境を確認しながら、夏の水分・塩分補給についてご相談を受けています。
暑い時期の過ごし方に不安がある方は、診察時にご相談ください。
本記事について
本記事は、高血圧の方の熱中症予防に関する一般的な情報をまとめたものです。
必要な水分・塩分量は、発汗量、活動内容、年齢、心臓・腎臓の状態、服用中のお薬などによって異なります。個別の対応については、主治医にご相談ください。