高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙などは、将来の脳卒中や心血管病の発症に関係することが知られています。
しかし、患者さん一人ひとりが持つ危険因子の組み合わせは異なります。血圧だけ、コレステロールだけを見るのではなく、複数の危険因子をまとめて評価することが大切です。
豊川医院では、生活習慣病の患者さんのうち対象となる方に「久山町スコア」を計算し、将来のリスクを患者さんと共有しながら、今後の治療方針を考える指標として活用しています。
久山町スコアとは
久山町スコアは、福岡県久山町で長年続けられている疫学研究「久山町研究」のデータをもとに作られたリスク評価方法です。
日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」では、久山町研究のデータに基づくスコアを用いて、冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞をあわせた動脈硬化性疾患の10年以内の発症リスクを評価します。
同ガイドラインのリスク評価フローチャートでは、主に40歳から79歳までの一次予防対象者について、久山町スコアを用いてリスクを分類します。
スコアは、将来の病気の発症を断定するものではありません。
現在の危険因子を総合的に確認し、生活習慣の改善や治療の必要性を考えるための目安です。

久山町研究の歴史
久山町研究は、1961年に福岡県久山町で始まりました。
研究開始当時、日本人の死亡原因として脳卒中が大きな問題となっていました。その実態や原因を明らかにするため、地域住民を対象とした長期的な追跡研究が始められました。
久山町では、住民健診を基礎として、病気の発症や生活習慣との関係が継続的に調べられてきました。長年にわたる研究から、高血圧、糖代謝異常、脂質異常、喫煙などと脳・心血管病との関係について、多くの知見が蓄積されています。
日本人の地域住民を長期間追跡したデータに基づいていることが、久山町研究の大きな特徴です。
久山町スコアで評価する主な項目
久山町スコアでは、以下のような項目を組み合わせて評価します。
- 年齢
- 性別
- 収縮期血圧
- 糖代謝異常の有無
- LDLコレステロール
- HDLコレステロール
- 喫煙の有無
それぞれの数値や状態を点数化し、合計点から10年以内の動脈硬化性疾患の発症リスク区分を確認します。
一つの検査値だけでは分かりにくい将来のリスクを、複数の危険因子を含めて見える化できる点に意義があります。
当院で久山町スコアを活用する理由
生活習慣病の治療では、検査値を基準範囲に近づけることだけが目的ではありません。
将来の脳卒中や心血管病を予防し、患者さんが健康に生活できる期間を守ることが大切です。
豊川医院では、対象となる患者さんに久山町スコアを計算し、以下のような場面で活用しています。
- 現在の危険因子を患者さんと一緒に確認する
- 生活習慣改善の必要性を分かりやすく共有する
- 血圧や脂質など、治療の優先順位を考える
- 治療目標を患者さんと相談する
- 定期的な検査や通院の意義を共有する
スコアを示すだけでなく、どの項目がリスクに影響しているかを確認し、改善できる点を一緒に考えることを大切にしています。
スコアは治療方針を一緒に考えるための指標です
久山町スコアが高い場合でも、将来必ず病気を発症するという意味ではありません。
反対に、スコアが低い場合でも、すべての病気を否定できるわけではありません。
また、すでに冠動脈疾患やアテローム血栓性脳梗塞を発症したことがある方、糖尿病、慢性腎臓病、末梢動脈疾患などがある方は、久山町スコアとは別の考え方でリスク評価や治療目標を設定する場合があります。
年齢、既往歴、検査結果、生活状況などを含めて、医師と相談しながら活用することが重要です。
生活習慣病についてご相談ください
高血圧、脂質異常症、血糖値の異常などは、自覚症状が少ないまま進行することがあります。
健康診断で異常を指摘された方や、ご自身の将来の脳・心血管病リスクについて知りたい方は、検査結果やお薬手帳をお持ちのうえ、ご相談ください。
豊川医院では、一般内科・総合診療の視点から、患者さん一人ひとりの状態を確認し、今後の治療方針を一緒に考えていきます。